安全に自分のトラウマと向き合うこと

※この記事は過去記事を再考・改編したものの再掲となります。

トラウマセラピーのセッション

セラピスト(カウンセラー)とクライアントが心理療法を進めていくその一連の流れを、「セッション」と呼んでいます。

「セッション」という言葉は、ミュージシャン同士の演奏、集会や会合などとしても使われますね。

それは一人ではない複数人数での一連の行程を指します。
お互いの共鳴と、言葉ではないコミュニケーションや、タイミングも、リズムなど大切にされ進行していきます。
心理療法においては、表現される言葉やその力、気持ち、その他表現されるものも大切にしていきます。

なお、トラウマ関連の症状やお悩みを扱う心理療法のセッションは、現実的には、美しいだけの音楽を奏でるように、進んでいくばかりではありません。
クライアントさんが自身の人生に向き合うようになると、予測の範囲を超えて、過去の苦しかった記憶や経験からくる心の痛みや解放されないまま残っている感情や身体反応、また、その影響からそれを抱えてくれていたパーツさん(パーツ心理学や解離の概念においてのパーツ)が、セッション中にも出現してくることがあります。

もし、こんな時には

こちらにクライアントとして訪れ、心理セッションの最中において、
もし

焦りたくなったり

あきらめたくなったり

無理をしそうになったり

逃げたくなったり

怒りたくなったり

怖さを感じたり

消えたい衝動が出てきたり
恥の感覚が出てきたり
セラピストの言うことがわからなくなったり

何か違和感がぬぐえなかったり

そういった気持ちが、ご自身の中で沸き起こっている際には、

「今○○と感じています」「今○○な状態です」とか、「ストップ」「ちょっとまって」「少し時間をください」「難しい」「上手くできない」ど、ご無理ないよう、お伝えしていただいて、構いません。

どんな感情でもどんな反応でも、ご自身の回復やトラウマが癒されるための心理セッションの経過として、大事なサインになります。

心理セッションの中で、そういった、トラウマ反応がゆえに心身に調和がとれないとき、その時に出てくる症状や反応が大きすぎる場合、セッションの調和が難しく不協和音になるときなど、上記のような焦りや不安や恐れなどが出てくることが、少なからずあると思います。

クライアントとして「セッションを上手くやらなければ」という気持ちが出てくることもあるかもしれません。

いずれにせよ、その場その時に出てきてくれた気持ちも、身体反応も、大切なサインであり、相談しながら、ちょうどいい安全なセッションを無理なく進めていけたらと思っています。

安全とともに進行していくセッション


「トラウマへのセルフ・コンパッション」金剛出版, 2018の著者、デボラリー氏は、
「心理セラピーのセッションはセラピストとしてクライアントのトラウマの癒しや変容をガイドしていくことでもあり、それはラフティング=急流下りをクライアントとともにするようなものでもあります。
ガイド役は、その川の下り方をマスターしなければならないし、経験が必要です。どんな岩にぶつかったとしても、その日の川の流れがどんなに激流だったとしても、ゴムボートの乗り方から漕ぎ方を安全を最優先にガイドしていく必要があります。」
と、述べています。(2018ワークショップにて)

ラフティング(急流下り)のガイドは、安全のための必要装備の準備やライフジャケットの着方から示す必要もありますね。

同乗者がラフティング(急流下り)を安全に楽しみゴールするために、ガイドはすでにラフティングを自分が経験し、熟練している必要があります。

ガイド役であるセラピストは、クライアントのトラウマの癒しにあたり、クライアントさんに何がおこってくるのかについて想定していることもありますが、もちろんそうでないときもあります。

それでも、ガイドしながら、トラウマのエネルギーを抱えた神経系が安全に調整され、解放できるように進めてまいります。