朝の涙と行けない自分への戸惑い
「朝になると、なぜか勝手に涙がこぼれてしまう」 「仕事の些細なミスが怖くてたまらない」 「上司の顔色を伺うだけで、心臓がバクバクする」
そんな苦しさの中で、ついに身体が動かなくなってしまったとき。多くの方は「もっと頑張れるはずなのに」「自分が弱いせいだ」と自分を責めてしまいます。
でも、どうか知ってください。 その涙や身体の凍り付きは、あなたの神経系が「もう限界だよ」と叫び、溜まりすぎた内側の圧力を逃がそうとしている、とても大切で健気な反応なのです。
適応障害という診断は、あなたの性格の欠陥ではありません。むしろ、あなたの神経系が「あなたという大切な存在」を守るために、必死に働き続けた結果なのです。

適応障害は、あなたの神経系がかけた「全力のブレーキ」である
適応障害の症状として「動けなくなる」のは、あなたの意志が弱いからではありません。
それは、生物学的に備わった、システム全体の崩壊を防ぐために、身体が備え持っている「緊急停止スイッチ」が働いた状態です。
私たちの神経系には、危険から身を守るための「モード」が備わっています。本来は一時的なピンチを乗り越えるためのものですが、過酷な環境でこのスイッチが入りっぱなしになると、心身はオーバーヒートしてしまいます。
そのとき、あなたの神経系は「これ以上進んだら、あなたが壊れてしまう!」と判断し、全力でブレーキをかけました。これが、朝に体が動かない、意欲が湧かないといった状態の正体です。
適応障害は「弱さ」ではなく神経系が限界までがんばった結果です
従来の「根性論」では、ブレーキがかかった車にさらにアクセルを踏ませようとします。
しかし、それは故障を招きます。
適応障害は「弱さ」ではなく、あなたの身体が限界まであなたのために頑張ってくれた証拠。
動けない自分を「自分を守るために無意識にでも賢明な判断をしてくれたね」と捉え直すことは、回復への最も優しく、大切な一歩となります。
「過剰適応」という名の、自分を削る生存戦略
適応障害に陥りやすい背景には、「過剰適応」という状態があります。
これは、周囲の期待や環境に自分を無理やり合わせ込み、本音や苦しさを押し殺して適応しすぎてしまうことを指します。
特に、真面目な性格の方や、「周囲の空気を読むのが苦手だからこそ、人一倍努力して合わせようとする」発達障害の特性を持つ方は、この罠に陥りやすい傾向があります。
承認欲求や「嫌われたくない」という強い思いから、限界を超えて仕事を抱え込み、笑顔で自分を削り続けてしまうのです。
現代社会では「空気を読み、期待に応えること」が美徳とされますし、文化的にも「協調を大事に」「皆で力をあわせて」と言われ続けてきました。
しかし、自分の感覚を無視して周囲に適応しすぎることは、心身を蝕むリスクを伴うという逆説的な側面があります。
表面上は「優秀な働き手」に見えても、その内側では、あなたがあなた自身を犠牲にして必死に持ちこたえていた……
その切実な頑張りを、まずはあなた自身が認めてあげてほしいのです。

原因は今の職場だけではない?「心の土台」にある愛着の傷
適応障害のきっかけは現在の職場にあるかもしれませんが、その反応の強さは、過去に形成された「心の土台」と深く関わっていることがあります。
ここで重要なのが「発達性トラウマ」という視点です。
トラウマとは、震災や事故のような単発の大きな事件だけを指すのではありません。
「安心していられない時間が長かったこと」その時間の積み重ねが、静かに神経系の設定を形づくっていきます。神経系に影響を残します。
例えば、子供の頃から親の顔色を伺い「いい子」でいなければならなかった環境や、弱音を吐くと居場所がなくなると感じてきた経験です。
今の職場がきっかけだったとしても、その反応の強さは、過去に作られた「心の土台」と深くつながっていることがあります。ここで大切になるのが「発達性トラウマ」という視点です。
トラウマとは、大きな事件だけを指すのではありません。「安心していられない時間が長かったこと」そのものが、神経系に深い影響を残します。
例えば、子供の頃から親の顔色を伺い「いい子」でいなければならなかったり、弱音を吐くと居場所がなくなると感じてきたりした経験です。こうした「安心できない時間」の積み重ねは、神経系に「常に警戒せよ」「失敗は許されない」という過敏な設定を焼き付けます。
今の職場で起きている苦しみは、職場ストレスではなく、幼少期から積み重ねてきた防衛反応の蓄積が、今の環境でついにキャパシティを超えて溢れ出してしまった状態のなのかもしれません。

言葉にならない「体の感覚」から整える新しいアプローチ
心のケアといえば「話すこと(カウンセリング)」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、適応障害の背景にある「危険モード」は、脳のなかでも思考を司る部分ではなく、より原始的な「生き残り」を司る部分(神経系)で起きています。そのため、言葉だけでは届かない領域もあるのです。
ここで大切になるのが、体の感覚を入口にする身体心理療法の視点です。
頭で考えるのみならず、体の内側から「安全」を伝えていくアプローチです。
• 神経系の状態を翻訳する: 常に張り詰めて休まらない「過覚醒(オンのスイッチが固まった状態)」や、感覚が麻痺して動けない「フリーズ(緊急停止状態)」を、体の感覚を通じて解きほぐします。
• 身体からの「裏口」アプローチ: 胸の締めつけや呼吸の浅さといったサインに共に優しく意識を向け、思考で自分を変えようとするのではなく、身体の反応を安全に扱っていきます。
回復には、個人の内面を整えることと同時に、源泉となっているストレス源を取り除く「環境調整」も不可欠です。
神経系が「ここはもう戦場ではない」と心から納得したとき、本来備わっている「自己調整力」が自然と動き出し、回復が始まります。
人生を整え直すための「入り口」に立つ
適応障害は、決してあなたの人生が壊れてしまったサインではありません。
むしろ、これまで自分を犠牲にして走り続けてきた生き方に、あなたの神経系が「もうこれ以上、あなたを傷つけさせない」と勇気を持ってストップをかけてくれた、愛に満ちた証拠です。
今のつらさは、あなたがこれまでどれほど一生懸命に生きてきたかという、何よりの証明です。
最後に、ほんの数秒だけ、今の自分の身体に意識を向けてみませんか。 椅子に座っているなら、お尻にかかる体重の感覚を。 立っているなら、足の裏が地面に触れている重みを。
たった3秒間、足の裏の感覚を感じるだけで構いません。その小さな「今、ここにいる」という感覚が、頑張りすぎてしまったあなたの神経系に「安心」を届ける、最初の一歩になるはずです。
Renewでは適応障害からくる症状に対し、身体心理療法と認知療法など統合的にサポートしています。



